「それでもボクはやってない」



 会社の友人(ブロガーではない)にかなり勧められ、それでもボクはやってないを見てきました。



●ストーリー(ネタバレもろあり)
 フリーターの青年・金子徹平(加瀬亮)は先輩から紹介してもらった会社の面接に行く途中、朝の通勤ラッシュに巻き込まれていた。乗車率250%という電車は身動きもできない。乗り換えのために降りた金子は後ろから歩み寄る女子中学生に腕を捕まれ、「今、痴漢したでしょ」と呼び止められる。一緒の電車にいたサラリーマン(田口浩正)も、女子中学生を支持し、ちょとした騒ぎになる。駅員に事務室で話を聞くからと言われる金子は、「やっていないのだから話せばわかってもらえる。」そう思って事務室に向かう。
 事務室に連れて行かれると、「その人はやっていません。」と言うOLが現れた。しかし駅員は聞く耳を持たず、事務室の扉を閉めてしまう。すかさず金子は扉を開けるが、そのOLはもうすでに立ち去った後だった。事務所では話を聞くどころか、警察に引き渡される。
 話は警察で聞くから、すぐ終わるからという警察に、大事な面接があるんです、と反論する金子。しかし強制連行される金子。それは長い苦難への第一歩であった。
 警察では同様に痴漢をした人が取り調べを受けており、その犯行を自白していた。金子も刑事から頭ごなしにやったんだろ!の一点張り。事情を話しても聞いてもらえない。話を聞いてもらえないならここにいてもしょうがない。そう思う金子は取調室から出ようとする。すると刑事は金子に手錠をかけた。金子は任意同行ではなくすでに逮捕されているのだ。私人による現行犯逮捕(第213条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。)だ。
 今正直に言えば5万円程度の罰金ですぐに出られる。略式裁判つまり交通違反と同じだ。刑事にそう言われるが、やっていない物は認められないという金子。すると留置所に拘留されてしまう。留置所では詐欺罪で捕まった男に当番弁護士について聞く。当番弁護士とは1回目は無料で相談できる制度で、金子は自分の無罪を主張する。しかし当番弁護士は今なら5万円程度で示談すればすぐに出られる。もしそれを拒めば裁判になって3ヶ月は出られない。裁判になっても無罪になる可能性は低い。起訴されたうちの99.9%は有罪になってしまう。そう言われ落胆した金子から、弱々しく言葉が漏れる「やってないんだ・・・。」
 その頃金子の母親・豊子(もたいまさこ)が上京してきた。管理人(竹中直人)に頼んで部屋に入れてもらう。すると警察から逮捕されたと連絡された大学時代からの友人・斉藤達雄(山本耕史)が心配して家に来てくれた。無罪を信じる達雄と豊子は弁護士を探して回る。民事裁判と刑事裁判の違いもわからない二人は右往左往しながら、元裁判官の弁護士・荒川正義(役所広司)と新人女性弁護士・須藤莉子(瀬戸朝香)と巡り会う。最初、須藤は痴漢裁判などやれないと断るが、もし本当にやっていると確信したら降りていいから、否認裁判なんて滅多に経験できる物ではないからやりなさいと荒川に言われ、渋々引き受ける。
 警察、検察どちらの取り調べでも犯人扱いされ、自分の主張を聞いてもらえない。「確かな証拠もないのに起訴できるはずがない」そういう荒川の言葉だけが金子の希望だった。ところが「次の駅で扉が開くのに、どうして挟まった上着をそんなに撮る必要があったんだ?」その質問に答えられなかった金子。検察は「起訴だ。起訴。」そう言い、裁判になることが決まった。
 「被告人は前へ」裁判長の言葉と共に裁判が始まる。
 豊子と徹平は以前無実の痴漢で捕まった男の助言を受け、当時やっていないと言ってくれたOLを探す。それと共に、裁判は傍聴人がいる方が裁判官のやる気も変わってくる。そう言われ毎日OLを探し、友人らを誘って傍聴人を集める。
 裁判は金子に有利な展開となりつつあった。しかし裁判官が途中で変わってしまう。前の裁判官が痴漢の裁判で無罪判決を出した男が再度痴漢容疑で捕まったのだ。真犯人に無罪判決を出したのが真の異動の理由かはわからないが新しい裁判官は、頭から金子を真犯人として扱っているようにも見えた。
 裁判官は常時200件近い案件を抱えている。1つの裁判が長引けば他の裁判にも影響する。裁判官の査定は何件こなしたかで決まる。裁判官も所詮はサラリーマンと同じなのだ。
 金子とその弁護団は再現ビデオを作成し、金子に反抗は無理だと言うことを証明する。さらにあの日駅事務室に来てくれたOLも見つかった。
 そして第9回公判。判決が言い渡される。「主文。被告は懲役4月とする。」・・・「もしこの判決に意義がある場合は14日以内に控訴することができる。」金子はすかさず答える。「控訴します。」





●感想、思ったこと(ネタバレあり)
 この映画キャストもスタッフも超豪華です。監督はハリウッドでもリメイクされたShall we ダンス?周防正行、製作は踊る大捜査線亀山千広、キャストもハリウッドでも人気の役所広司硫黄島からの手紙加瀬亮などなど。演技派俳優のオンパレードです。それだけあって本当に迫真の演技で、映画の世界にのめり込みます。

 普通の人が、普通の生活をしていて、ある日突然逮捕されてしまう。普通から地獄に一気に転落してしまう。この映画のことがもしかしたら今日自分の身に起きてしまうかもしれないんです。本当怖い。
 でも、どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなんだろう。今まで痴漢を立証するのが困難なので注意などですまされていたものが、刑事犯罪として起訴されるようになったのはいいことだと思うが、それが行き過ぎてしまって本映画のような事態に陥ってしまう場合もある。あまりにも女性保護を行き過ぎれば今度は示談金目的の女性も現れるかもしれない。
 男性によっては痴漢と言われるのが怖くて電車に乗る時は彼女や奥さんなどにガードしてもらう人もいるといいます。今まで女性が電車に乗る時に彼氏や夫にガードしてもらっていたのが、一気に女性弱者から男性弱者に変わってしまいましたよね。
 裁判官や検事、刑事にとってこの主人公の金子は今までに出会う何千人、何万人のうちの一人。裁判官は金子を有罪にしても無罪にしても、あの法廷が終われば次の日の準備をしたりして、家に帰って家族と会い、次の日にまた法廷に立つんだろう。裁判官にとって金子は0.00?%の存在かもしれないけど、金子にとっては統計上の数字じゃなく、自分の人生そのもの。こいつは犯罪者だという色眼鏡をかけて捜査・裁判にだけはあたって欲しくないですね。
 「冤罪を0に近づける=真犯人を逃す確率が上がる。」もっと言えば冤罪を0にするためには真犯人の検挙率を0%にすればよく、逆に真犯人を全員検挙するためには冤罪を0%にすればいいんです。(指紋認証システムでも同じことが言え、本人を本人でないとご判断するのを0%にすると、別の人を本人と判別する確率が100%になるという理論があります。)でも、この矛盾した理論をできるだけ冤罪0で真犯人を逃す率を0にするために、捜査する警察、警察の動きを規制する検察、さらに弁護士を交えて裁判するのですから、この映画のように警察はもとより、検察も裁判官も色眼鏡をかけるということは、そのルールを無視していることであって、やってはならないことなのに・・・。
 金子の場合、判決によって「上に手を逃がせばいい」とか言われているので、上級裁判所でその点の検証をすればきっと無罪になるだろうなぁ。いい加減な捜査しかしていないので二審で無罪判決が出たら、検察側は上告はしないだろうし。

 でも、誰でも無罪であれば裁判所で無罪判決が出ると思うよね。それがこんな結果になるなんて、本当にショックです。痴漢や交通事故は一般の人がちょっとしたことでもしかしたら加害者になってしまう可能性が高いことなので、普段から注意しないと。(バイク通勤で良かったかも。あと、ビデオ類も処理しなきゃ・・・(笑))

 今まで面倒だなあと思っていた裁判員制度ですが、この映画を見て、日本もこういう制度があった方がいいかもと思いました。だって金子もそうでしたが、逮捕されたら何すればいいのか普通の人は知りませんよね。金子の場合詐欺師に当番弁護士のことを聞いたから、家族への連絡できることを聞いたから、いい弁護士に恵まれ裁判できましたが、もし教えてくれる人がいなかったら、どうなっていたか。もっと裁判のこと、いろいろ知る上で重要かもしれないなぁって思います。
 学校でも犯罪者になったらどうなるってこと教えてくれないですものね。学校でこういうことをちゃんと教えていれば高校生の犯罪も少なくなるんじゃないかと思います。

 最後に、達夫のように何ヶ月も一緒に戦ってくれる友達がいるっていいなぁ。金子も、事件で失ったものも多いけど、達夫や友人のこと、大事に思っただろうなぁ。あんな友人ボクにはいるかなぁ。

p.s.
この映画を見る前は、無実だったら裁判してでも無実を主張すると思っていたけど、実際は示談しちゃうかも。でもこんな男が増えれば、示談金目当ての女性も増えてしまうし、難しいところですね。
ところで、女性の感想も聞いてみたいです。よろしく。




1974年に建て替えられる前の最高裁判所庁舎のレンガ。
今まで最高裁ってきれいな建物で正義の象徴でかっこいいと思っていたんですが、この映画のラストのモノトーン調の最高裁を見たら、悪の巣窟とまでは行かないけど、正義の味方とは思えなくなってしまった。白か黒か判断できないそんなグレーが最高裁だからこそ、建物の色も灰色なのかな。。。



見て良かった度:●●●●●




●2007/02/14追記
この作品、「 グアンタナモ、僕達が見た真実」、「輝く夜明けに向かって」の3作品で、やってない映画シリーズと言うらしいですよ。




※キャンペーンはこの記事掲載時に実施しているものです。実際は注文時にご確認ください。





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