映画：ステキな金縛り

三谷幸喜の三年半ぶりの新作。ステキな金縛りを見てきました。。

●ストーリー（ネタバレあり）

　エミ（深津絵里）は恋人の工藤万亀夫（木下隆行）と同棲している三流弁護士。この日も俳優の卵の工藤に起こされるが寝坊。今日は自分が任されている裁判なのだ。工藤から朝ご飯代わりのバナナをひったくり慌てて家を飛び出すが、トラックにひかれそうになり書類をばらまけてしまう。そんな彼女は大事な裁判に遅刻してしまう。
　エミの父親（草なぎ剛）は敏腕弁護士であったが、エミを残して早くして他界してしまう。そのつてでエミは弁護士・速水悠（阿部寛）の下で働いているが、さすがにこれ以上失敗するならばやめてもらうしかないと次の案件を紹介される。それは矢部五郎（ＫＡＮ）が妻の矢部鈴子（竹内結子）を殺害したというものだった。早速容疑者に会いに行ったエミだが、矢部は犯行のあった時刻には鬼切村の民宿に泊まっていたという。しかし鬼切村からは車を飛ばせば犯行現場まで往復することが出来るのでアリバイにならない。それどころか旅館の女将（戸田恵子）は、矢部が犯行時刻には部屋にいなかったと証言したのだ。しかも鈴子は双子の姉である日野風子（竹内結子）の夫・日野勉（山本耕史）と不倫関係にあり、それが犯行の動機となったのだ。
　エミは早速矢部に会いに行くが、犯行時刻は落ち武者の幽霊が自分の体の上に乗り、金縛りに遭っていたと証言。次にエミは金縛りにあったという鬼切村の旅館へと向かう。女将の話によると矢部が泊まった部屋の隣は幽霊が出るという噂があり使われていないという。さらにその隣がトイレだ。犯行時刻、たまたま廊下を通りがかった女将が矢部の泊まっているふすまが開いていたので覗いてみたところ誰もいなかったというのだ。
　エミは矢部が夜中トイレに行き、戻るときに部屋を間違えたのだと推測。だからふすまは開きっぱなしだったのだ。試しにエミはその曰く付きの部屋に一泊することにする。すると・・・、目の前に幽霊（西田敏行）がいるではないか！
　驚いたエミは早速幽霊に事情を聞く。自分を怖がらないエミに困惑するその幽霊は更科六兵衛という武将だと名乗る。自分の使える殿を裏切って敵に寝返ったとされ、仲間に首を切られたのだという。しかしそれは全くの誤解で、身の潔白が証明されないと成仏できないと落ち武者の幽霊となったのだという。
　そして六兵衛は事件当日に一晩中矢部の体の上に乗っていたことを認めた。エミは早速、六兵衛を法廷で証言して欲しいという。六兵衛が証言しなければ矢部は無実の罪で裁かれることになる。自分の境遇が似ているその矢部を助けるため、六兵衛は法廷に出ることを許諾する。
　エミは早速六兵衛を連れて東京に戻ることにし、タクシーを呼ぶ。しかし六兵衛の姿は旅館の女将にも、落ち武者のような髪型のタクシーのドライバー・占部薫（生瀬勝久）にも見えない。
　途中、六兵衛がおなかがすいたと立ち寄ったファミレスで六兵衛はたくさん注文し、ウエイトレスの前田（深田恭子）に不審に思われる。なにせ１人しかいないのに前田がメニューをエミは反対にするのだ。しかも１人なのにたくさん注文するのだ。運ばれてくる料理を六兵衛は眺め、匂いを嗅ぐだけ。幽霊である六兵衛は食べることは出来ないのだ。食べないのにこんなにたくさん注文して！と起こるエミだったが、悲鳴が聞こえた。トラック運転手の伊勢谷（梶原善）には六兵衛の姿が見えるのだ！
　事務所に戻ってきたエミだが、速水には六兵衛の姿は見えない。六兵衛を証言台に立たせたいというエミに、疲れてるんだろう。今日はもう帰れと言う。信じてくれない速水にエミは１つのアイデアが浮かんだ。エミは速水の言う通り帰るそぶりをする。六兵衛を残して。しばらくしてエミが事務所に戻ってくるが、その間、速水が医者に停められているゴディバのチョコレートを食べ、タップダンスの練習していることを言い当てる。速水はもう幽霊の存在を信じるしかなかった。
　敏腕検事の小佐野（中井貴一）と裁判長・管仁（小林隆）との打ち合わせで、アリバイを証明するために証人を立たせたいというエミに、管は冗談で「だったら、落ち武者を証言台に立たせるしかないなぁ。」と言う。その言葉を真に受けたエミは本気で六兵衛を証人台に立たせる手続きに踏み出した。
　裁判当日、六兵衛が現れない。それもそのはず。日が暮れないと六兵衛は現れることが出来ないのだ。それまでしばし休廷が言い放たれる。日が暮れて再び裁判が行われるが、その証人は容疑者の矢部とエミにしか見えない。エミは幽霊を可視化する装置の電源を入れると、六兵衛の姿が現れ、裁判長、傍聴人、裁判員は驚く。法廷を侮辱するという者もいたが、幽霊裁判と一般人の注目を浴びるようになってきた。
　検事の小佐野は幽霊を証人とすることなど間違っていると雄弁を披露するが、それに対して六兵衛が大声で文句を言う。ところが一瞬だが小佐野が六兵衛を見たのだ。六兵衛は小佐野も自分の姿を見ることができるのだと悟った六兵衛はその事をエミに伝える。しかし小佐野は幽霊など信じないの一点張りだ。
　翌日、新聞各紙が幽霊裁判と揶揄するが、とある法廷画家・日村たまる（山本亘）が描いた新聞の挿絵が妙にリアルであることに気がついたエミは、その日村も六兵衛のことを見えると確信する。
　現代の世界を楽しみたいという六兵衛を銀座やいろんなところに案内するが、銀座の通行人（篠原涼子）も六兵衛の事が見えるらしい。
　見える人には共通点がある。そう確信したエミは見える人を集めて話し合う。すると見える人は、最近不幸であること、最近死を身近に感じたことのある人、そしてシナモンが好きな人であることと言うのが浮かんだ。エミも裁判の結果がうまくいかなければ速水に見捨てられ、トラックにひかれそうになり死を意識した。日村ももともとは画家を目指していたが売れないためアルバイトで法廷画家をやっているのだ。そして小佐野も愛していた愛犬を失ったのだ。
　エミは六兵衛に頼んで、あの世から愛犬の幽霊を見つけ出し、小佐野に見せた。小佐野は愛犬と遊び、六兵衛の姿を見えることも白状する。
　ところが幽霊を監視する役人・段田（小日向文世）が現れた。成仏できなくなった霊が人間界にとどまるのは勝手だが、人間に関与してはいけないという掟があるのだ。それを破った霊は役人に監視され厳しく罰せられる。六兵衛がまさにそうなのだ。段田は六兵衛を霊界に連れ戻すと言うが、段田は人間界の映画が大好き。同じく映画好きのエミと意気投合して六兵衛を連れ戻すのをしばらく待ってくれるようになる。
　一方この幽霊裁判が注目されるようになって聞きを感じ始めたのは真犯人の日野勉だった。彼は霊媒師の阿倍つくつく（市村正親）を雇って六兵衛を成仏させようとするが、段田は「こう言う輩が一番むかつく」とつくつくを排除する。普通の人から見えれば勝手につくつくが飛び去るようにしか見えない。世間はもう幽霊を信じるしかなかった。
　裁判員も裁判官も傍聴者も、もう幽霊だけを見、容疑者の矢部の存在は忘れかけ始めていた。「僕の裁判なんだけどなぁ。」矢部はつぶやく。
　結局裁判は、幽霊を信じる者、信じない者。もうはちゃめちゃに。そこでエミは、六兵衛が小佐野の愛犬を見つけてきたように被害者の鈴子の霊を連れてくればいいのだという。六兵衛は霊界に向かうが鈴子の霊は見つからない。六兵衛は言う。だって人類が誕生してからすべての人類がいるんだよ。見つけ出すなんて無理だよ。」と。
　妹が殺された裁判に一度も顔を出さない姉の風子の事が気になったエミが会いに行くが、大好きだった植物を枯らせる風子に疑問を抱くエミ。そこでエミは六兵衛に風子の霊を探すように頼む。すると六兵衛はなんなく風子の霊を見つけ出してきた。今現在風子だと言って日野と暮らす女性は風子ではなく鈴子だったのだ。殺せたのは鈴子ではなく風子の方だったのだ。風子は法廷で大暴れ。風子の霊の証言で真犯人は日野勉と鈴子であることがわかり、事件は一件落着。前代未聞の幽霊裁判は幕を下ろした。
　約束通り段田は六兵衛の霊を霊界に連れて行くことに。その前に六兵衛はエミにお礼をと、父親の霊をこの世に連れてきた。しかし霊が見えるのは最近死を意識したシナモン好きで、不幸続きの人だけ。裁判に勝利し、父親の名を汚すことを避けた、しかも友人である六兵衛の潔白も証明できたエミは幸せいっぱい。せっかく現れた父親の霊を見たり会話したりすることはできなかった。しかしそれでもエミは父親の存在を感じ取り、自分は父親に見守られている幸せを実感するのだった。

●感想、思ったこと（ネタバレあり）

　いや～。おもしろかった。さすが三谷幸喜ワールドです。三谷幸喜の特徴はカット割り（カットせずに一度の連続した撮影）が長くて、映画と言うよりも感激に近い作品を生み出すのですが、今回は意外にカット割りが短くて意外でしたが、なんか自分も傍聴人になったかのような臨場感。もう劇場であることを忘れ、大笑い。
　西田敏行はどちらかというと嫌いな俳優なんですが、こういう作品には向いてますよね。武士のようなまじめな表情・口調と、おちゃらけた現代人のような表情・口調のギャップがたまらない。深津絵里もそれほど好きな女優ではないけれど、かわいいと思ったのは初めて。その他にも主役級のキャストがちょい役で。その度に笑ってしまいます。特にこの記事の前に書いたカイジ２やちょっと前に書いたサラリーマンＮＥＯ 劇場版（笑）にも出演していた生瀬勝久には大爆笑。
　三谷幸喜のすごいところは、伏線の張り方がすごくうまいことだと思います。冒頭エミがトラックにひかれそうになるのは、エミのダメさを表現するだけのものかと思ったら、その後、伏線だったことがわかります。確か2時間30分くらいの長めの映画ですが、無駄が何一つないんです。緻密な計算がすばらしい。
　そしてもう１つは細部にもきちんとこだわっていること。エミが鬼切村に向かうバスのナンバープレートにすらこだわっています。そうした緻密な計算された笑い、それが三谷幸喜ワールドなんですね。残念ながら2011年は他の映画もすばらしくベスト10には入りませんでしたが、コメディ映画の最高峰と言っていいと思います。
　最後にラストは妙な安心感というかほっこり感があるところですね。今回の作品ラストはあちこちで涙を流しているお客さんもいましたし。
　一つ残念なことは竹内結子のキャスティング。好きな女優の一人ですが、派手な風子にはちょっと向かないと思う。芝居風の演技を頑張ってくれてはしたけれど。彼女はもう少し純な役のがあっているなぁ。

観て良かった度：●●●●● ５点　最低１点、最高５点

• ステキな金縛り公式サイト
  
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• 三谷幸喜(監督・脚本)
  
• 深津絵里(エミ 役)
  
• 西田敏行(更科六兵衛 役)
  
• 阿部寛(法律相談所のボス・速水悠 役)
  
• 竹内結子(矢部鈴子／日野風子 役)
  
• 浅野忠信(歴史研究家・木戸健一 役)
  
• 中井貴一(小佐野 役)
  
• 草なぎ剛(エミの父親 役)
  
• 小日向文世(霊界の役人・段田譲治 役)
  
• 木下隆行(エミの恋人・工藤万亀夫 役)
  
• 佐藤浩市(工藤の友人・村田大樹 役)
  
• 小林隆(裁判長・管仁 役)
  
• 戸田恵子(旅館の女将 役)
  
• ＫＡＮ(容疑者・矢部五郎 役)
  
• 山本耕史(資産家・日野勉 役)
  
• 市村正親(霊媒師・阿倍つくつく 役)
  
• 山本亘(法廷画家・日村たまる 役)
  
• 篠原涼子(銀座の通行人 役)
  
• 生瀬勝久(タクシー運転手・占部薫 役)
  
• 深田恭子(ファミレス店員・前田くま 役)
  
• 梶原善(ファミレスの客・伊勢谷 役)
  
• 野間口徹(裁判官 役)
  
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Comments

[yutake☆イヴ]

ＴＢありがとうございます。

気持ち玉つけました！(^_-)-☆

よろしくお願いします！

[よしな]

yutake☆イヴさん、コメント＆気持ち玉ありがとうございます。
娘さんの携帯戻ってきて良かったですね。