美術館:フェルメール展 ~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~




 先日行った巨匠ピカソ展(その時の記事はこちら。)に感化され、今度は東京都美術館で行われている(た)フェルメール展に行ってきました。
 最終週と言うこともあってか連日80分待ちだとか。僕が行った時も60分待ちと書かれており、入るまでに50分かかりました。ひょえ~、こんなに待たされるとは思ってもいませんでした。
 巨匠ピカソ展は特別開催日(一般者の入場がない招待日)に行ったのですんなり入れました。それでも多くの人がいて、こんなにたくさんいるんだと驚かされましたが、まさか美術館ってこんなに混んでいる物とは思いもよりませんでしたよ。


 フェルメール展と言っても、フェルメールの作品は7点のみ。サブタイトルは“光の天才画家とデルフトの巨匠たち”。その名の通り、オランダ、デンマーク市街地であるデルフト画家達の作品38点が展示されています。予定されていた“絵画芸術(The Art of Plainting)”は作品保護のため展示中止なんだそうです。

 まず会場に入って1番目の作品は、ヤン・ファン・デル・ヘイデンの“アウデ・デルフト運河と旧教会の眺望”。続いて“アウデ・デルフト運河から見た旧教会の眺望”(当ブログ下の方にある絵)。タイトル的にはほとんど同じですが、絵もかなり似ています。どちらも正確に町を描写した写真のような作品。個人的には明るく立体的な後者の方が好きですね。
 展示後半にはその場所の写真が飾られているのですが、当然ですが微妙に違いますし、写真はそれほどきれいな教会ではないんです。その時のありのままを映し出す写真と違い、やはりリアルな叙景的な絵であっても、描き手の心が現れる物なんですね。

 続いてヘラルト・ハウクヘースト、エマニュエル・デ・ウィッテ、ヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリートの教会内部の絵。この中で気に入った物は“オルガン・ロフト下から見たデルフト新教会の内部”ですかね。






 続いてパウルス・ポッテルの“馬屋のそばの人々と馬”。これは別に気に入ったわけではないのですが、興味を惹かれました。馬屋の外よりも馬屋の中にいる馬の方が明るいのです。写真で撮るとおそらく馬屋の中の馬は暗くて見えないでしょう。覆い焼きという手法を使わないと撮れません。最近のデジカメではALO(キヤノン)やDライティング(ニコン)といった暗いところを明るくする機能がありますが、絵画の世界では普通に行われている手法です。描くのも見るのも人間なのですから、描き手の主観が簡単に入れられる絵画は、写真よりも優れているところの一つですね。



 カレル・ファブリテイウスの“楽器商のいるデルフトの眺望”(チラシの一番下の作品)。これも同様に楽器商のいる屋内は暗いはずなのにやや暗い感じに落としているだけ。また、魚眼レンズを使ったような絵というのもおもしろいです。ファブリテイウスは透視箱というものの製作者なんだそうですが、透視箱というものが説明を読んでもよくわからず・・・。昔、中学の時に美術の時間に聞いたことがあるような気もしないでもないですが。

 同じくファブリテイウスの“歩哨”。街角で兵士が寝ており、その近くに犬が忠実に待っている風景なのですが、解説を見ると「怠情に対する戒め」なんだそうです。絵を見ても「きれい」とか、そんな感想しかできない僕としては、どこをどう見ればそう言う解説になるのか不思議です。



 続いてピーテル・デ・ホーホの作品が8作品。“食糧貯蔵庫の女と子供”では、召使いの女性がスカートを履いた子供に飲み物を差し出している絵です。解説によるとこの子供は女の子ではなく少年なんだそうです。しかも中身はビール!当時は離乳の時にビールを与えるのが推奨されていたとか。日本では考えられないですよね。

 同じくホーホの“窓辺で手紙を読む女”も良い作品でした。作品が劣化したからか当時辛そうなのか、女性の表情がよく見えないんです。悲しい顔にも見えますし、穏やかな表情にも見える、はたまた寝ているようにも見える。どんな手紙なんだろうと、絵に引き込まれます。

 ホーホの作品はどれもやさしい感じの色遣いで、とてもきれいでした。



 そしていよいよフェルメール。今では三十数点しか残っていないんですって。師は誰かもわかっていない。謎に秘められた感じですね。それでいて美術にさほど興味のない僕でも名前を知っているってすごい知名度です。

 さすがにフェルメールのブースはすごい人。朝の通勤ラッシュの中で絵を見ている感じです。なかなか進まないし、前の人の頭でよく見えない。美術鑑賞ってそういうもの?もっと、落ち着いた雰囲気でゆっくり時が進むものかと思っていました。

 “マルタとマリアの家のキリスト”(チラシの右上)では、フェルメール唯一の宗教がなんだそうです。次の“ディアナとニンフたち”(チラシの左下)は唯一の神話画なんですって。見ていてよくわかりませんでしたけどね(汗)



 “小路”(チラシ左列の2段目)は町を描いた2作品のうちの1つ。最初にあったヘイデンのように透視法を用いた叙景的な絵ではなく温かみのある絵でした。

 “ワイングラスを持つ娘”(チラシ左列3段目)は今回の作品の中で一番有名なんじゃないかという絵。解説ではステンドグラスに描かれている手綱を握った絵は「酒の魅惑に対する戒め」と描かれていましたが、人が多すぎてステンドグラスまで見えません。スカートが本物のように美しく輝いていたことと、娘にワインを勧める男がイヤらしく、その娘もまんざらでもない顔をしている表情が印象的なことくらいしか見えません。



 “リュートを調弦する女”(チラシ右列2段目)は英語名が“Woman with a Lute”。英語名では調弦しているとか弾いているとか書かれていないのですが、日本語名は調弦となっています。実は最近まで弾いていると思われていたのですが、最近は調弦しているのだとわかってきたそうです。確かに左手を見れば調弦しているように見えますね。



 


 “手紙を書く婦人と召使い”は手紙を書いている婦人とそれを退屈そうに(?)待つ召使いですが、解説を読むと床には本や下書き(?)そして手紙に封をするロウみたいな奴が捨てられていたりしています。そう言うところも見るんですね~。二人の表情ばかりを見ていました。



 フェルメールの作品はフェルメール全35作品紹介を見てみてください。



 フェルメールのブースを過ぎると、また少し人が減りました。けれどもうだいぶくたくた。もう入場してから90分間。90分間満員電車に乗っているような感じですものね。だいぶ疲れてしまいました。



 個人的にはフェルメールもすばらしいですが、ピーテル・デ・ホーホやヤン・ファン・デル・ヘイデンが好きでしたねぇ。

 芸術の秋と言うには遅いですが、おもしろかったです。ただ、もう少し空いていればなぁ~。











この記事へのコメント

2008年12月19日 00:39
こちらにもこんばんは
気持ち玉のボタンを押すとブログ上部にアイコンがでるんですね~
ということでここでも押しちゃいました
フェルメール展・・・
めちゃ込みで何度も足を運びましたが挫折・・・
そして、ナショナルギャラリーとルーブル美術館には行ったことありましたが記憶にないものもありますね~
ゆっくり落ち着いて美術館巡りしたいのですが・・・こればっかりは覚悟するしかないんですかね~
受胎告知の時もあの1枚の絵画にものすごい人が殺到してましたし。。。
見る人ってそんないるの?って思っていたのですが絵画好き人口って多いんですよね~
2008年12月19日 01:24
瀧さん、コメントありがとうございます。
僕もポッチとブログ気持ち玉押してみました。こうなるんだ。。。
僕も美術館なんてそんな人がいるとは思っていませんでしたよ。人気なんですね~。今度はどこの美術館に行ってみようかなぁ。

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