Sweet Rain 死神の精度
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●ストーリー(ネタバレあり)
ある雨の日、葬儀が行われている とある教会に1人の男・千葉(金城武)が現れた。その男に女の子が話しかける。「まだ10歳なのに。」と少女。「死に年齢は関係ない。やることをやれたかだ。」と答える男。「お花あげてくれば?」と花を差し出す少女。その花を受け取ると一瞬にして花は枯れてしまう。「俺には無理だ。」「そろそろ行こうか。」そうして少女はこの世から旅立っていった。
千葉の職業は死神。病気や老衰、自殺以外の死、いわゆる不慮の死が予定された人間の7日前に現れ、死(実行)か、生(見送り)かを決めるのが仕事だ。しかしほとんどは実行を選択する。そして千葉がこの世に来る時はなぜか必ず雨。未だかつてこの世の青空を見たことがない。
1985年のとある雨の日、千葉は今回のターゲット・藤木一恵(小西真奈美)に接触した。一恵は電器メーカーの苦情処理の電話を受ける仕事をしていた。地味で暗い彼女は職場でも好かれていない。そんな彼女は名指しで指名してくるクレーマー(吹越満)のしつこさと気味悪さに悩まされていた。そんな一恵に千葉は好青年を装って近づいた。
傘が壊れ一恵の洋服を濡らしてしまった千葉が彼女に触ると、彼女は気を失ってしまった。千葉はコインランドリーに一恵を連れ、洋服を乾かした。一恵が意識を取り戻すと、最初は千葉を警戒するが、どこか天然の千葉に次第に心を開いていった。食事をしてわかれたあと、一恵は二人組の男に襲われる。千葉が戻ってくると、あっという間に男たちをやっつけてしまった。
翌日千葉は一恵の会社の前にあるレコード屋で試聴をしながら一恵が出てくるのを待っていた。千葉はミュージックが大好きなのだ。人類最高の発明だと評する。
「君は死ぬことについてどう思う?」千葉は一恵にこう尋ねる。幼い頃に両親を亡くし、引き取られた義祖父、ようやくできた婚約者にも死なれた。愛する者はすべて先に旅立ってしまう。そんな人生に未練はないと言う。事実、一恵の手首にはためらいキズがいくつも残されていた。
クレーマーは次第にエスカレートし、家にも電話がかかってくるようになった。
そして7日目。死神が実行か見送りかを判定する日。一恵はクレーマーのしつこさを上司に相談していた。何かあったら考えるという上司に一恵は「何かあってからじゃ困ります」と激怒。この日は早退することにした。
雨の帰り道、コートを着た男が一恵の手をつかみ、カラオケボックスに連れ込もうとした。逃げる一恵。しかし一恵は追い詰められて、逃げ場所がなくなった。
そのクレーマーは、実は有名な音楽プロデューサー。彼がプロデュースした歌手は必ずヒットするという。そいつは偶然知り合った一恵の声に惚れ込み、なんとか歌の才能を確かめ、一恵をデビューさせようとしていたのだ。
ミュージックが好きな千葉は、一恵がまだすべきことをしていないと判断し、この日珍しく見送りを決めた。2007年。今度のターゲットは40歳のヤクザの藤田(光石研)。藤田は今時珍しい任侠を大事にするヤクザだ。彼は仲間を殺した黒木に復讐しようと黒木の居場所を探していた。千葉は情報屋として藤田と接触することにした。千葉はまず藤田がかわいがる子分の阿久津(石田卓也)に接触した。阿久津は藤田に恩があり、なんとしても藤田を死なせたくない。黒木のところに殴り込みに行けば黒木に殺されてしまうのではないかと、なんとしても藤田を黒木の元に連れて行きたくはないと考えていた。
藤田のアジトに潜入した千葉はこう問う。「死ぬことについてどう思う?」藤田は黒木にところに行けば殺されることは覚悟の上だった。しかしやられた仲間の復讐に行くことがけじめだという。
藤田が野望用で出て行った後、阿久津と千葉は黒木の手下に捕まってしまう。黒木は藤田に電話をかけ、阿久津を人質に取ったことを告げる。1人でやって来た藤田は激しい銃撃戦の中、黒木の手下と黒木をやっつけ、阿久津を助け出すことに成功した。
千葉は上司である犬(ディア)に言う。やるべきことをやりとげたと。
翌日藤田は事故で死んでいった。2028年。今度のターゲットは70歳の美容師。彼女はお手伝いのアンドロイド・竹子(奥田恵梨華)と二人で暮らしていた。海の絵を描きに来たという千葉はここで髪を切ってもらう客としてやってきた。
頭を流している最中にこの老婆が言う。「あんた死神だろ。昔あんたみたいな雰囲気の男に会ったことがあるからわかるんだ。」意外な言葉に動揺を隠せない千葉はホントのことを言う。
次にやってきたのは髪を切りに来た少年。彼はカットをしてもらいながら急に叫んだ。「あっ!死神」ビックリした千葉だが、今、学校で流行っているトレカで死神のカードを見つけたのだ。死神のカードは超レアカードなのだ。そのカードを見ながら千葉は「死神ってなんでカマを持っているんだ?」と尋ねる。
この老婆は死ぬ前に最後の願いを千葉に持ちかけた。3日後、7歳くらいの子をたくさん連れてきてくれと言うのだ。料金は無料でも良いからと。
千葉は気まぐれでその願いを受け、近くの小学校に向かうが思うように子ども達を集められない。終いには「この男に注意」の似顔絵まで作られてしまった。竹子に相談し、ある秘策を思いつく。そして約束の日、たくさんの子ども達がこの美容室にやって来た。レアカードの死神をもらえると言う謳い文句に釣られて。
しかしその中で1人だけ料金を払おうとした子供がいた。その子は死神のカードをもらえることも知らないようだった。そしてその子はカットが終わると「ありがとう」と言い残し、父親の車で帰っていった。車には「あくつ」と飾られていた。
老婆は言う。息子から電話があったんだよ。孫を連れて行くと。孫にあったら情がうつっちまうじゃないか。でも私の愛した人はみんな死んでしまう。そうなったらかわいそうだろ。そういうと散歩死に外に出て行った。
「死は誰にでもいつか訪れる。特別な事ではない。」と千葉。老婆は答える。「えぇ、そうね。でもそれは貴方が、人のそれまでの人生を見ていないから言えることよ。死は特別な事ではないけれど、その人にとってとても大切な事なの。」
竹子はSunny DayのCDをかけた。部屋に優しい声が広がる。昔おばあちゃんが歌っていたのというそのCDのジャケットには藤木一恵の姿があった。
千葉はその老婆の元へと向かう。「まさかあんたが。」という千葉。いつしか雨はやみ、雲の合間から青空が覗いていた。
●感想、思ったこと(ネタバレあり)
電話ボックスにピンクチラシの張り紙。今時そんなものあるのか?なんて思って見ていました。そしたら一恵が落とすウォークマンがテープ。あぁ、時代は現代ではないんだと納得。1985年というとまだテープの時代ですものね。でもレコードショップではCDだったような気が。子供時代なので覚えていないが1985年ってカラオケボックスってあったのかなぁ?2つ目のエピソードではレコード店ではなくレンタル屋に。あぁ、現代なんだ。でもだいぶ昭和っぽかったけどね。そして3つめのエピソードではアンドロイドって、そんな未来なのか?と思ったら2028年なんですね。アンドロイド以外は全く現代と同じ世界ですね。
ところで、2028年なのに、劇中のラジオでは「2002年以来25年ぶりの日本でのワールドカップ」と言っていました。あれ?計算が合わないんだけど。ラジオの再放送?それとも1年前に録音していたものを聞いていたのだろうか。。。
筧昌也監督と言えば、美女缶の監督。2005年春放送の世にも奇妙な物語(主演:妻夫木聡、監督:筧昌也)でリメイクをやっていて、本家の美女缶も見てみたいとTSUTAYAに行ったのですが、傷がついて見られなくなったため廃棄してしまったと言うことで見られなかった短編映画です。その筧昌也監督の初劇場用長編映画作品です。原作を大胆にアレンジしたという本作。なんかもっと温かいものと期待していたのですが、ちょっとおとなしめだったかなぁ。70歳の一恵の台詞にはぐっと来たものの、別に死について考えさせられるような内容でもなかったし。結局何を言いたかったのか僕にはよくわからなかった。残念だけど。
俳優陣はいいですよね~。アジアの金城武はさすがです。役にはまりまくり。小西真奈美はしゃべり方があまり好きじゃないんですが、素朴で素顔な演技は好きです。そして黒犬のディアちゃん(フラットコーテッド・レトリバー、メス)かわいいです。字幕での台詞もなかなか。(笑)
俳優、題材は良いのに、筧昌也監督がそれを活かしきれていなかったように思います。筧昌也監督の今後に期待します。
犬と私の10の約束もそうでしたが、俳優、題材が良いのに、スタッフがそれを活かしきれていない作品が最近多いように思います。2006年は洋画よりも邦画の方が興行収入が多かった年です。2007年は逆転し洋画の方が多かったです。もっと邦画も頑張ってくれないと2008年も邦画は負けてしまいますね。
観て良かった度:●●●○○ 3点 |
- Sweet Rain 死神の精度公式サイト
- Sweet Rain 死神の精度 スタンダード・エディションDVD(コレクターズエディションはこちら)(2008/08/27発売予定)
- Sunny DayCD
- 「Sweet Rain 死神の精度」オリジナル・サウンドトラックCD
- 金城武写真集Chiba Takeshi Kaneshiro
- 死神の精度単行本
- 筧昌也監督
- 伊坂幸太郎原作
- 金城武出演作品
- 小西真奈美
- 富司純子出演作品
- 光石研出演作品
- 石田卓也出演作品
- 村上淳出演作品
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で。
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※1:当記事掲載時です。実際の送料は注文時にご確認ください。
この記事へのコメント
1985年だとカラオケボックスありません。だって当時まだDAMみたいに曲をダウンロードして流す方式じゃなくて、客がリクエストするとお店の人が8トラックテープをかけて歌本見ながら歌っていたと思います。
私もこの映画、イマイチだと思いました。アヒルと鴨とコインロッカーと同じ原作者だというから期待したのに、脚本が悪いのか、テレビ局が作った映画だからなのか。最近テレビ局が作る映画があんまり好きじゃなくて、特にテレビドラマのディレクターの映画第一作みたいのは苦手です。
私も明日映画ハシゴして来ようかなあ。
そして、レポートがまた長々とすごいですね。読みごたえがあります。映画は劇場で、それなりに楽しむことにしています。2時間ほど、現実を離れて、脳と感情をフルに活動させてくれるのですから、こんな素敵なものはありません。
「死神の精度」結構楽しかったですよ。テレビドラマのような気がしましたが。
今、3本目書いてま~す。3本目も、Kさんも観たことのある作品ですよ。
今年の邦画はホントに力なくて。おもしろいと思った邦画はまだ1作品。しかもこの作品は2007年公開で、僕が観に行ったのが2008年と言うだけ。もうちょっと邦画、頑張ってもらいたいです。「アヒルと鴨とコインロッカー」はKさんオススメの中の1つでしたよね。まだ観ていないけど。。。(^^ゞ
それでは!
すみません。書き出すと止まらないもので、かなりの長文になってしまっています。もともと自分の備忘録として書くことにしていたので、他の方が読む気なくしてしまう長さでもとりあえず気にせず書いてしまっています。(汗)
映画はホントに現実を離れていろいろな世界に連れて行ってくれる。しかも2時間で1,200円(レイトショー料金)ですから時給換算でたったの600円。こんなに安くて、しかも手軽にこんなに楽しめるエンターテイメントってないですよね~。
> 今年の邦画はホントに力なくて。おもしろいと思った邦画はまだ1作品。
っていうことなので、絶対お勧めの映画を1本。
先日山梨出張中に観た『休暇』はすごくいい映画で、今のところ私の今年度No.1です。
山梨先行上映で終わっちゃったけど、その他の地域は6月7日から公開です。川崎地区では上映無いからチッタにリクエストしてみようっと。
映画3本目アップしました。実は3本で打ち止めです。(汗)3本観るのも大変だけど、当ブログ長文なので3本アップするのもかなり大変です。
「休暇」ですね。覚えておきます。僕も休暇とりたい。最近家に帰るとバタンキューってくらい疲れてます。だったら映画そんなに観に行くなって?いや、ストレス発散なので。。。
5月はゴールデンウィークがあって、さらに3日も代休を取らなくてはいけないので、少しは楽になるかな。でも代休を取った次の日って、2日分の仕事が待っているんですよね~。(涙)
後半「神様なんだから、一つくらい願いを聞いてくれてもいいじゃない。」という一恵のセリフに「ああ、死神も神様だったんだよなあ」と考えさせられました。
「死」という、重い題材ですが観終わった後、爽快感のある作品です。会話が洒落てるので、何回でも飽きずに観れるかも知れません。
常に降り続ける雨もラストシーンを盛り上げる為の長い演出ですが気になりません。
大きく3つに時代は分かれますが、女性の化粧やラジオで流れるニュースの内容など細かいところに時代感が覗けます。ロボットの登場には驚きましたが、一恵が使用していたウオークマンが時代を表してくれたように思います。
実際に小西真奈美が歌う、「SunyDay」もいい出来で、プロデユース次第では大ヒット?かも。検索は「藤木一恵」でヒットします。
なんか、不思議な映画だった。
最後に雨がやむシーンはやっぱりという感じがしましたが、何となく観ている人の心も晴れましたね。雨がやむのは想像していましたが、藤木一恵の曲のタイトルが「Sunny Day」だったのが、「そう来たか!」とやられました。
私もこれ見ました。たまたまレディースデーで、安くてよかった~って感じでした。。
よかったのは最後の方だけで、あとは、この展開がひょっとしてずっと続くの??って。。。
俳優陣がよかったから選んだけど、イマイチでしたね。
レディースデーおトクですよね。メンズデーも実施している映画館はありますがまだまだ少数。これだけ本数観ているとちょっと金額でもバカにならないので、マジで作ってもらいたいです。
キャスティングはよかったですが、ちょっと中だるみした感じなのが残念でした。