ブックレビュー:問題な日本語



 だいぶ前に買った本ですが、問題な日本語を読みました。

 今は一段落したところですが、この本を買った去年は教育本、特に日本語に関するものが全盛期でした。テレビも本もそう言ったものがあふれていました。本書もその内の1冊です。例えば、「とんでもございません」は間違えかどうか?私も某テレビ番組を見ましたが、これは「間違えです」と言っていました。その番組では、なぜ間違えか?の説明はあっても、どうしてそう言う言い方が出てきたのか?までは解説していません。本書では、間違えかどうかよりも、どうしてそう言う言い方が出てきたのか?に主眼をおいています。
 本書の著者は明鏡 国語辞典の著者らですが、彼らは「とんでもございません」「とんでもありません」は必ずしも間違えではないと言っています。上述したテレビ番組でも、「とんでもない」を丁寧に言うと「とんでもないことでございます」と言うと解説しています。すると観客(?)から「あ~っ!」という声が聞こえるが、果たして「あ~っ!」と言った人の中で、「とんでもないことでございます」と普段言う人はどのくらいいるだろうか?「とんでもないことでございます」と言うと堅苦しくて逆にニュアンスが変わってきてしまいます。本書によると「とんでもありません」は戦後から出てきた言葉で、語構成や昔の言い方で判断するのは必ずしも適当ではなく、それと同時に今の生きた用法をしっかり見据えることも大事だと言っています。
 確かに言葉は生きています。常に新しい言葉ができ、新しい言い回しができています。ただの雑学やクイズのような日本語本ではなく、本書はもっと深く突っ込んだ、日本語解説書と言っていいと思います。
 日本語解説書と言っても、堅苦しい本ではなく、全国の高校の国語の先生から気になる日本語を募集し、1つに対して2~4ページ程度で解説した本で、読み物として最適な本です。
 例えば「コーヒーの方お持ちしました」「こちら和風セットになります」「お連れ様がお待ちになっております」「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」なんて、ちょっと気になる日本語34個について、その他108個のどっち?と題して「充分VS十分」「湯がわくVS水がわく」「机の上に置くVS机の上へ置く」「水が飲みたいVS水を飲みたい」など、微妙な使い回しの解説などがあります。
 またところどころに入っているマンガも面白いです。

 2つだけ回答を書いておくと、「こちら和風セットになります」の「なります」は変化を現すほかに、相手の予想外のことを言う時の2つの用法があるそうです。前者は解説するほどではないと思いますが、後者は例えば「お子さん、何歳になられたんですか?2歳ですか?」「いえ、もう4歳になります。」という用法です。ですから「こちら和風セットになります」は、今から和風セットになるのではなく、お客の予想外のものを提供するという意味になる。つまり謙虚な姿勢を現していると言うことだそうです。「え?これが和風セットなのかよ!」と怒られないための防衛策なのか?
 「コーヒーの方お持ちしました。」も僕的に違和感はありますが、本書を読んで、必ずしも間違えではないのかとわかりました。
 「湯をわかすVS水をわかす」。小学生の時に「お湯を沸かす」と言ったら、「お湯がさらに沸いたら相当熱くなるよね」と先生にからかわれたことがありますが。お湯が主題の時、例えばお茶を飲みたくてお湯が欲しい時などは「湯をわかす」を遣い、水がお湯になる過程が大事な時は「水をわかす」というそうです。お湯が欲しいから「湯沸かし器」っていうんですね。

 正直言って、国語が苦手だった僕には、五段活用の話をされてもよくわからないこともところどころあったり、こんな活用学校で習ったっけ?というちょっと特殊な活用法も出てきて、100%理解したわけではありませんが、雑学や読み物としてなかなか面白い本でした。続編もあるので読んでみようと思います。



読んで良かった度:●●●●○







※1:当記事掲載時です。実際の送料は注文時にご確認ください。






この記事へのコメント

masya
2007年11月06日 11:52
いわゆる「接客業」の私などは読んでおいた方が良さそうですね。(こんなときも「よさげ」なんて言葉を使う人がいますが。)
会話は言葉のキャッチボールですから投げる側は相手が気持ちよく取れる球を放らないと続きませんよね。
いくら正しい「いいかた」をしても先方が不快なら使わない方がいいし、議論も成り立ちません。
先日もTVで「なるほど」と言う相槌は目上には不適当だと、言うのを観て非常に違和感を受けました。でもそれ以来、使ってません。メディアの影響力って強いですね。
2007年11月06日 23:06
masyaさん、こんにちは。
言葉のキャッチボール。その通りですよね。正しい日本語だけを使うのは、ど真ん中しか投げないキャッチボールで面白くありません。やっぱり少々間違った日本語でも、自覚していれば、相手とのコミュニケーションをとる上で必要なことはあると思います。逆にmasyaさんのおっしゃるとおり、正しい日本語でも不快に思わせる場合もありますし、会話って難しいですね。

p.s.
なるほどって、目上に使っちゃいけないんですか?!
まあ、なんとなく言われてみればそうかもしれません。
知りませんでした。

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