ブックレビュー:タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち
そんな中読んだのがタイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たちという本です。 タイムマシンと聴くと、SF?って感じがしますが、いえいえノンフィクションです。ストーリーのある本ではないのでノンフィクションというのもちょっとおかしいかもしれません。科学者・技術者はタイムマシンを本当に作ろうとしているのです。未来の情報をもらってきて株や競馬などで儲けようとしている人もいるかもしれませんが、ほとんどは純粋に科学への挑戦を目標としている人たちです。 そんな人たちの挑戦はどこまで進んでいるのか?例えば相対性理論で知られるアインシュタインとインドの科学者ボースは「ボース・アインシュタイン凝集体」と呼ばれる物質を予想した。不確定性原理と呼ばれる「原子のような小さい粒子は速度を特定しようとすると位置が正確に決まらない。位置を正確に特定しようとすると速度が正確にわからない。」という原理。では物質を絶対零度に冷却したらどうなるか?絶対零度では物質は動かない。動かなければ位置も特定できるはずである。もしそうなれば不確定性原理は間違っていることになる。しかし実際は絶対零度でも不確定性原理は有効で、原子の形状がおぼろげになり、個々の区別がつかなくなると計算された。これをボース・アインシュタイン凝集体た呼ぶのだが、1999年2月、これが実際に作られた。しかも光を当てると光の速度が遅くなると言うのだ。実際に実験を行ったリーネは、スピルバーグの映画を観ているようだとコメントしたそうです。 もしこの凝集体で窓ガラスを作ったらどうなるか。作った後しばらく山の上に置いておき、それを窓ガラスにしたら居ながらにして山の景色を楽しむことができる。これはスローガラスと呼ばれ、昔からSFなどの分野で登場していたもの。小説は科学の先端を行っています。 SFと言えばタイムパラドックスものがたくさんあります。例えばバックトゥザフューチャーでは過去に戻ったマーティーが両親の出会いを奪ってしまいます。しかも母親がマーティーを好きになってしまう。するとマーティーが持っていた家族の写真から兄が消え始めてしまう。そして自分の手も半透明になり、はやく二人の中を取り繕わないと自分が消えてしまう。でも自分が消えれば出会いを壊す人もいなくなる。続編では過去を変えた後、未来に戻ってもそれはマーティーが来た未来とは違う並行する世界に戻ることになると言う説明もあります。 本書ではバックトゥザフューチャーの話は出てきませんが、科学者を悩ましているのはこのようなタイムパラドックス。 タイムマシンを作れるという証拠はあるが、タイムパラドックスは許されない。その回答としていろいろな案があるそうです。バックトゥザフューチャーでドク・ブラウンが言ったように平行宇宙(次元)が無数にあるというもの、まだ発見されない法則によって過去は変えられないというものなどなど。 もう1つ疑問がある。タイムマシンがあるなら未来から来たという人がいても良いはずである。実際未来から来たと主張する人もいる。(ニコラ・テスラは人類ではじめたタイムトラベルしたのは自分だと主張している。)本書ではこれらについても触れているが、もし過去を変えられるならば独裁者によって今頃支配されているハズであるという。そうなっていないのは、タイムマシンが作られた日よりも前には戻れないのではないか?という説もある。例えば1光年離れた先に鏡を置いたとすると、地球から観れば2年前の地球が見えるはずであるが、これをタイムマシンとすると、タイムマシンが作られはじめた日(鏡を地球から搬送しはじめた時点)より前は見ることはできない。上述したスローガラスもそれを作った日よりも前は見ることができない。同じようにタイムマシンが作られたよりも前には戻れないのではないかという説である。 長くなってきたのでそろそろ締めにしたいと思います。最後にタイムマシンは作ることができるの?本書の最後にはチェルノブロフが装置の中と外の時計を12分間ずらしたことを報告している。ただし24時間で12分なので、実用にはならないが大きな進歩である。この装置に人間も入った。体への影響を考え30分ほど(つまり、15秒のタイムトラベルをしたことになる。)しか入っていなかったが、時間が消え、空間が折りたたまれるような感覚に陥り、自分が存在するようにも存在しないようにも感じたという。 ドラえもんのように22世紀にはタイムマシンが本当にできているかもしれないですね。 |
読んで良かった度:●●●●○ |
以前紹介した(記事はこちら)のタイムマシンとはまた毛色が違って面白い本ではありましたが、物理や宇宙の知識が全くない人だと難しいかもしれません。
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この記事へのコメント
本や映画などで過去を思い描くのも一種のタイムマシンかもしれませんね。でも僕は歴史は苦手です。(^^ゞ