ブックレビュー「タイムマシン」



 今回読んだ本はタイムマシンです。先日紹介した宇宙エレベーター(記事はこちら。)の著者アニリール・セルカンの本です。著者はトルコ人初の宇宙飛行士。タイトルから言ってSFものっぽい感じがしますが、そうではなく著者らの15歳の頃の実話にしたお話です。高校を中退した15歳の少年らが大学教授を巻き込んで、本気でタイムマシンを作ろうとしたお話です。



●ストーリー(ネタバレあり)
 宇宙エレベーターの中でも少しだけ紹介していますが、全寮制の学校に通うケンら13人の少年。彼らは寮のG部屋、通称問題児部屋と呼ばれる部屋にいる。かれらはしょっちゅう停学処分をくらっているからだ。この日も彼らのいたずらのおかげで、寮は全焼してしまった。
 それが理由で全員が退学を食らう。彼らの中にはコロンビアのスラム出身のビクトル、ギリシャ人のイアニス、他にもアメリカやスイス、ドイツ、トルコ、ハンガリー、フィンランド・・・。世界中から集まった仲間だ。
 退学処分を言い渡される直前、ビクトルはケンに「僕はスラム出身だから親は飛行機のチケットを買うどころか、連絡が取れたかもわからない。僕がこの学校には入れたのはチャンスだった。僕ががんばれば家族の生活を変えられるかもしれない。でも実際は家族が元気なのかもわからず無意味な勉強ばかり。。。」でもケンは「スラム」という言葉すら知らなかった。ケンは「15歳になるまでの7年間一体何を経験していたんだろう?」そう思いながら校長室へ向かう。
 校長の話が終わると、ケンの父親は「『息子さんには最高の教育を受けさせますので、ぜひ我が校に入学させてください。』その言葉を信じて入学させた。今のあなたの話では私たちが信じた”最高の教育”とはあまりにかけ離れている」と言う。
 国に帰ったケンは、数週間は自由な生活を満喫した。しかしだんだんと退屈になってきた。そこで気になったのは子ども達が遊ぶ、タイムコップごっこ。今はやりのドラマ。悪者に過去を変えられないようにタイムマシンを駆使して過去を守るというドラマだった。
 ドラマを見たケンは「このドラマ最高!」と、物理学者の母親のところに来て「僕にタイムマシン作れると思う?」と問う。母は「じっくり考えてみれば?」こうしてケンはタイムマシンを作ることを決意する。でもそれには仲間が必要だ。まずは退学になった13人のうち、同じドイツに住むオリバーに電話をかけた。「一緒にタイムマシンを作らないか?」
 こうして退学した仲間はケンの家に集まり、タイムマシンを作り始める。
 水を温めて行くとできたばかりの宇宙の状態になっていく。1京の1京倍になると空間にゆがみができてその中に入ればどこか他の時空に行ける。今ある空間のゆがみはすべてバランスがとれて存在しているならば、人工でゆがみを作ってしまえばいいのだ。でもそのためには人類がかつて作れなかったほどの膨大なエネルギーが必要になる。それをどうやって作るか研究を始める前に、サッカーに行ってきます。夕食までには戻ります。とダニエル。
 もちろん彼らだけでタイムマシンを作れるとは思っていなかった。エネルギーを作り出すためのヒントをもらうためにマクブライト博士を尋ねたり、ヨーロッパでも最先端のセルン研究所を訪れたりした。セルン研究所のリー博士は彼らの話を聞き、「もし、世界中の少年たちが君たちのように関心を持ってくれたら、科学の未来は果てしなく進歩していくんだけどね。」とため息をつく。
 その頃には彼らの研究所のガレージもいっぱいになってきている。しかし電子と陽電子を衝突させてエネルギーを得るための装置を作るには小さすぎる。彼らはサッカー場を貸し切り、そこに巨大な電磁石を作ろう!でも、それでもエネルギーは小さすぎる。そこに聞き慣れない声で、「雷を使おう」。それは一度は断れたマクブライト博士の声だった。博士は一度は話を断ったものの、やはり研究に参加したいと子ども達を訪ねてきたのだ。
 少年らの親も参加し始めた。会社の社長をやっているユッシの父親は、「部下のことはわかっているのに、息子には『僕のことなんて何もわかっていない』と怒鳴られました。」なんて話をしている。彼らは少年たちを応援に来たのだが、今では自分たちが楽しんでいる。彼らもまた少年に戻っていた。

 実験の招待状が配られた。彼らを追い出した校長は「彼らを思い出すだけでもイライラするのに、世界中から集まってタイムマシンを作っているだと!全くいまいましい」と招待状を握りつぶす。
 報道関係者にも配られた。ケルン新聞の編集長は「そんなものは新人に任せておけ。」と言う。しかし副編集長は部下に、「新人の手配を頼んだぞと言う。新人には編集長と政治家のパーティーに行くと言っておけ。おまえは俺と実験を取材に行くぞ。」

 実験当日、今にも雷が落ちそうな好転に見舞われた。彼らのタイムマシンはすごい速度で開店し始める。そして秒読みがはじまる。20,19、18・・・。0。爆発音と共に光の固まりが見えた。





●感想、思ったこと
 普段本をあまり読まない僕も、この本はあっという間に読んでしまいました。2時間程度で読めてしまう本ですが、本当に面白い。SFじゃないですが、ワクワク、ドキドキ。本を読みながら、がんばれー!と応援したくなります。校長に向かって父親が吐く言葉に、スカッとする場面あり、目頭が熱くなる場面あり、本を読んでこれほど感動した作品はないです。(あまり本を読んでいないからという理由が大きいだろうけど。)
 小学生の頃に、やっぱり友達と「大きくなったらタイムマシンを作ろうぜ」と約束したことがありましたが、卒業してからは1回しか会っていません。(笑) セルカンの情熱と行動力には感服です。
 たぶん小さいときに、夢を抱いて何かを作りたいと思ったことのある人は多いと思います。そんな人にはぜひ読んでもらいたい一冊ですし、読書感想文の宿題にも向いていると思います。

 ちなみに、高校生がロケットを作る話遠い空の向こうに(DVD)もオススメです。



読んで良かった度:●●●●●







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