6/20は難民の日、「13歳の夏に僕は生まれた」見てきました。



 今年50本目(映画館のみカウント)は13歳の夏に僕は生まれたです。この映画も予告編を見て、絶対行かなければ!と思っていました。



●ストーリー(ネタバレあり)
 北イタリアのブレッシャという都市に住む13歳の少年サンドロ。彼の父親ブルーノは工場の社長、母親のルチアもその工場の経理で働いている。

 サンドロが13歳の夏、父親と、父親の友人の弁護士ポーピはヨットで地中海のクルージングに出かけた。ある夜サンドロは過ってヨットから落ちてしまう。必死に助けを呼ぶサンドロだがブルーノもポーピも気がつかない。しばらくたって、サンドロがいないことに気がついたブルーノ達はヨットを反転させてサンドロを探すが見つけることはできない。

 水泳の得意なサンドロだが、やがて力尽きてしまう。気を失い、海に沈んでいくその瞬間、誰かが海に飛び込み助け上げる。彼は密航船に乗っていたルーマニア人のラドゥ。密航船にはクロアチア、インド、スリランカ、スーダンなど様々な国籍の難民が所狭しと乗っている。ラドゥもその違法移民達の一人で妹のアリーナと一緒にイタリアを目指していた。

 助けられたサンドラだが、言葉も通じない。密航船の船員は海に補降りだしてしまえと言うが、ラドゥが機転を利かし、「戦争で両親を失った」と言っていると船員にウソの通訳をして、死は免れた。しかし今まで裕福に暮らしていたサンドラにとってそこは別世界。エンジンも何度も壊れるおんぼろ船。水や食べ物もろくにない。トイレも船底でビニール袋にする有様。

 やがて船員達はイタリア領海で別のモーターボートに乗り換え、後はアリーナに操縦してイタリアに向かえと言い残して去っていってしまう。やがて巡視船に発見され、移民センターに連れて行かれる。サンドラは自分は遭難したイタリア人であることを説明するが、ラドゥやアリーナのことが気になり、自分も移民センターに入りたいと懇願する。

 その頃、サンドラが死んだと思っているブルーノとルチア。ルチアはヨットで撮影したサンドラのビデオを涙を流しながら何度も見ている。ブルーノが肩に手を置くと、それを振り払うルチア。そんな時にブルーノの携帯がなる。その携帯に出ると、受話器からは死んだはずのサンドラの声が聞こえる。そう、サンドラは生きていたのだ。

 移民センターにサンドラを向かいに行く二人。サンドラは自分を助けてくれたラドゥとアリーナを助けて欲しいと両親に頼む。ブルーノは有り金と携帯をラドゥに渡し、何かあったら連絡しなさいという。しかしサンドラの「助け」とはイタリアに向かい入れることである。

 ブルーノとルチアは、決心の末、ラドゥとアリーナを養子として引き取ることを決意する。しかし、ラドゥは18歳であったため強制送還せざるを得ない。せめてアリーナだけでもと思うが、アリーナは兄と別れることは考えられない。ポーピや移民センターと相談の末、一度ルーマニアに帰り、合法的にイタリアに呼び寄せることにする。しかし、ラドゥに前歴があるとこの方法もできない。両親を失った彼らは盗みでもしないと暮らしていけない。当然ラドゥは窃盗の前歴がある。

 そんなおり、ラドゥとアリーナは移民センターから抜け出してしまう。ブルーノから受け取った携帯電話からサンドラに連絡し、サンドラの家に行く。ブルーノはラドゥに移民センターに戻るように説得するが、ドイツに行くと主張する。とりあえず二人はサンドラの家に一泊することにする。そこで友情の絆のミサンガをする。しかしその夜彼らは金目のもを盗み出て行ってしまう。

 裏切られたサンドラはミサンガを切ってしまう。数日後アリーナから電話がある。アリーナに会おうとミラノへ向かうサンドロ。そこにはラドゥの姿はなく、(おそらく)売春宿で働くアリーナの姿が。サンドラとアリーナはどうするあてもなく路上でパニーニをほおばる。






●感想、思ったこと(ネタバレあり)
 6/20は世界難民の日です。今年のテーマは希望(HOPE)だそうです。この機会に難民についてほんのちょっとでも理解してみませんか?「難民になるって、どんなこと?」では、難民になると厳しい暮らしが待っている。家族と離ればなれになってしまうことも多い。そんな過酷な状況が待っていることがわかっているのにどうして難民になるのか?難民の暮らしはどんなものか?そんなことが写真を交えて解説しています。

 ちょっと映画と離れて難民について書いてみました。

 さてさて映画の感想ですが、あまり難民について題材にした映画というのは少ないため、各方面で取り上げられている映画です。特に難民というと、紛争、治安維持軍などとの衝突、人道的団体とのやりとりといった映像が多い中、この映画では移民のための船、移民センターなど、難民達の暮らしに焦点を絞っています。そう言った意味では貴重な映画だと思います。ただやっぱり物足りなさを感じます。ラドゥや他の人たちがどうして難民になったのかの描写が少ないためいまいち感情移入しにくいし。最後も路上でパニーニを食べる二人。その後の展開がどうなるのか、何の伏線もないため中途半端な終わり方のような気がします。

 結局、難民ラドゥ達はサンドラ達が手をさしのべても貴金属類を盗んで去っていく。彼らは人を信じられなくなっているのかもしれません。ラドゥはサンドラに「誰も信じるな」と言っているあたりからもそう想像できます。でも、難民が、恩を仇で返す的な描写になってしまっているのがちょっと残念に思えました。



 前売り特典は、映画の中でも登場した友情の絆のミサンガ。映画の中でサンドロは切ってしまうと言うちょっと悲しいストーリーなんですけどね。



オススメ度:●●●○○
期待していただけにちょっと残念


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3,000円あれば、難民キャンプでの教科書10人分、毛布10枚、アフリカでは1人分の奨学金になるそうです。(国などによって違います。)






この記事へのコメント

2006年06月18日 18:57
TBありがとうございます。

聖さんという方から、よしなしごとさんあてのコメントが、何故か私のブログに着ていましたので、ここにコピーさせていただきます。

*************

よしなしごとさん、こんばんわ。
年間劇場だけで既に50本はすごいですね、
私は劇場に行くのは半年に1本程度なので感心してしまいます。
にしても、とても重いテーマの映画みたいですね、
世の中の不条理に対して正義の味方は都合よく現れないという現実。。。
たしかに実生活で大なり小なりそういう体験をして人は成長していくんですよね、厳しいけど現実、みたいに。
ラストや描写不足だと感じられた部分が多かったみたいですけど
あまり重くしすぎてもどんより気分になるので
監督が本当に描きたかった物を表現は出来ていないのかもですね。

http://yaplog.jp/sweet3/
2006年06月18日 22:03
よしなしごとさん、こんばんわ。
そしてMANAMIさん、ありがとうございます。
本当に大ボケです、なにやってるんだろ。。。
2006年06月18日 23:18
●MANAMIさん、いつもTBさせてもらってありがとうございます。今回はコメントわざわざ転送してくださってありがとうございます。今後ともよろしくです!

●聖さん、こんばんは。
たまにやっちゃいますよね。ボタン押した瞬間「ちがーう!」ってことありますよね。(^^ゞ

確かに、何かをみんなに主張したいと思っても、あまり重くなって誰も見なくなってしまっては、その主張をアピールできなくなってしまいますからね。自分が主張したいことを込めつつも、エンターテイメントとしても完成度を高くしなくてはいけない。こういうテーマはその葛藤というかバランスが難しいと思います。
桜水
2006年06月19日 00:33
よしなしごとさん、こんばんは。
仕事でカンボジア難民の方と縁があったのを思い出しました。その人は難民認定を受けて、日本で生活していますが、言葉や文化の壁で帰りたいとしきりに言っていました。国が落ち着いても、身内は亡くなったり、世界中に散らばってしまい、帰ることも難しい。
こうゆうテーマはどこに光を当てても難しいですよね。たとえ無事に住めても、その人の悲しみはずっと続いていくので。
2006年06月19日 01:59
桜水さん、こんばんは。
そうですね。帰りたくても、(物理的に帰ったとしても)本当の意味でその頃には帰れないですものね。

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